テーマ:被害地震から学ぶ長周期・長時間地震動と震源近傍の強震動
講師:久田 嘉章先生(工学院大学 教授)
日時:平成28年12月21日
概要:

1923年関東大震災から2016年熊本地震まで様々な特徴ある地震動特性と被害の特徴について解説してもらった。

まず、最近問題となっている長周期地震動について。1923年の関東大震災で観測された地震波の継続時間は600秒を超えており、長周期長時間地震動が発生していた。1964年の新潟地震や1968年の十勝沖地震でも長周期成分の地震動が観測されていたが、当時は「やや長周期地震動」と呼んでいた。しかし、2003年の十勝沖地震では苫小牧で石油タンクが被害にあうなど、その後の長周期地震動対策への契機となった。テレビ番組などでも「長周期地震動」という呼称が使われ、「長周期」とは周期10秒程度以上を指す言葉であったものの、現在では「やや長周期」という言葉は使われなくなった。南海トラフ巨大地震では長周期地震動の発生が危惧されている。国交省でも対策に乗り出し、地震動波形を提供している。これらの地震動は現行の告示スペクトルに対して最大で2倍程度大きくなっている。こうした国主導の地震動で設計することは本当に妥当なのだろうか?

断層近傍の強震動では、断層の破壊方向とその反対側では発生する地震動の大きさが異なる。断層破壊の方向では、断層直交成分に指向性パルスがみられる。断層近傍の地震動を予測する手法もあるものの、モデルのパラメータが変わると結果に大きな差が出る。震源断層や伝播過程の複雑さを反映できているのだろうか?

地表断層が現れるところでは、震源近傍の強震動特性であるフリングステップが観測されている。短周期地震動は大きくないが、大速度・大変位および地盤傾斜が生じる。高層建築や免震建築には注意が必要。2016年熊本地震の西原村では大きなフリングステップが観測されている。

米カリフォルニア州には活断層法で活断層の周囲では建築が禁止されている。しかし、活断層の正確な位置を特性することは困難であり、長い再現期間(数千年~数万年)であり、この間に高い耐震性を付与するような対策の方が重要ではないか。数千年に1度発生するような地震に対して、どのように対処していくのかについて考えておくことが重要となる。被害時の対応力を向上させるためにも、リスクマネジメントを検討すべきである。

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(文責:高山峯夫)