テーマ:近年の木造建築の変遷とこれからの課題
講師:大橋 好光(東京都市大学名誉教授)
日時:令和4年4月7日
概要:
大橋先生には10年前にもご講演をお願いしましたが、当時に比べると木造建築は脱炭素につながるということでより一層着目されている。
講演の前半では木造建築と地球環境のかかわり、中大規模建物への木造の適用状況、そしてCLTの導入などを紹介された。
後半では近年の技術について紹介。
CLTは1995年にオーストリアで開発され、その後日本に導入された。しかし、建物に使うには基準強度などを定めないといけないが、ようやく2016年に設計技術基準の告示が制定された。
CLTの使用方法については、できるだけ大きなパネルのままで使いたい。そのほうが施工も早く、建設業の職人不足の解決にもつながる。欧米では中大規模の部材プレハブ化は圧倒的にすすんでいる。日本はそうしたメリットを活用できていない。
CLTなどは薄い(5cm厚以下)のラミナ層を接着しているが、通常の柱材を接着して束ねるBP材というのも開発している。通常の柱材をそのまあ使うので、大きな設備はいらないし、たくさん束ねることで大きな柱にすることも容易。ただ、木材の乾燥を十分にしないといけない。
多層木造建築が広がってきたのは、防火・耐火技術が開発されたことが大きい。一方、ラーメン構造とした場合、水平剛性を確保することが難しい(ラーメン骨組だけだと柔らかい)。そこで、筋交いとかパネルで剛性を確保する必要がある。それでも高層化していけば耐力が足りなくなる。現実的には4~5階建てくらい規模が適切なのではないか。
高層木造建築の復元力特性などは実大実験をして求めている。まだ計算や理論で荷重-変形関係を求めることはできない。しかし、最近では増分解析をして、それを限界耐力計算で設計することが一般化しつつある。こうした現状には違和感を覚えている。
(文責:高山峯夫)