テーマ:免震構造物の多次元地震時挙動
講師:菊池優先生(北海道大学教授)
日時:平成27年7月17日
概要:
2011年東日本大震災以降、長周期地震動や水平2方向地震入力などに伴い新たな課題が生まれていると指摘された。その課題として以下を示された。
- 長周期化による免震層の応答変位の増大
- 地盤条件や建物特性を無視した盲目的な免震構造の採用
- 地震力低減に期待した過度の建物耐力の低減
- 形態多様化による単純明快な振動系への置換の困難さ
- 過大地震入力に対応できる地震応答予測手法の高度化
- 実地震を想定した免震部材の性能把握試験
最後の項目につては、実大部材に対して想定する応答変位、応答速度を再現する試験装置がわが国にはないことも大きな問題である。
実大試験が実施できる試験装置の一つにSRMD(カリフォルニア大学サンディエゴ校所有の試験機)がある。この試験装置を用いて実施した高減衰積層ゴムアイソレータの2方向加力特性について解説。高減衰積層ゴムを水平2方向の加力(楕円、真円加振)をすると、ねじれ変形が累積して、1方向加力時に比べて破断ひずみが小さくなることが確認されている。こうした挙動を再現できる力学モデルを構築し、実験結果との比較検証がなされている。
また、高減衰積層ゴムや鉛プラグ入り積層ゴムの多次元挙動(水平2方向+軸力連成)を再現できる力学モデルの開発とその精度についても解説された。このモデルが組み込まれているオープンソースの汎用構造解析プログラムOpenSeesについても紹介された。
(文責:高山峯夫)