◆ 第26回研究会 概要

講 師:坂本 功先生(東京大学)
テーマ:非構造部材の耐震性能について
(平成14年6月19日,構造計画研究所,参加人数:43名)

まず、非構造部材に関する文献は、体系化されていないが、関連資料はいろいろなところかでている。例えば、建築学会の出版物では、「構造計算のすすめ方・7 耐震構造の設計」(建築学会関東支部)と「非構造部材の耐震設計指針・同解説および耐震設計・施工要領(1985)」(現在改訂作業中)がある。前者の内容は20年ほど前に書いたものであるが、不幸にして進歩があまり無いため古い資料で通用しているのが現状である。
官庁営繕の技術書としては、「官庁施設の総合耐震計画基準及び同解説(平成8年)」)((社)公共建築協会)がある。これは、非構造部材や設備の設計に詳しいとのこと。そのほか、建築センターなどからも出版されている。

なぜ、木造建築や非構造部材の研究を行ってきているか(今では、7割方木造屋と自称されているそうだ)について、略歴を紹介しながら説明があった。
昭和41年に東京大学を卒業。卒業論文のテーマは、松下教授の薦めにより免震構造に関することを扱った。直接指導を受けたのは、当時建築研究所におられた和泉先生で、振動やコンピュータの使い方を教わった。
昭和43年、大学院博士課程進学。当時は免震のことを口にすることもはばかられる雰囲気があったので、大学院では相互作用の研究を行った。その後、建築研究所に入ったが、昭和48年には大学(第一講座、内田先生)へもどる。
第一講座では、何でもやっていいといわれた(RC構造、鋼構造以外のことは何でも含まれた)。そこで、木造をやっている人が少なかったので、木造を研究し始めた。現在、最初から木造一筋に研究されてきた方は案外少ない。非構造部材については、梅村先生から2次部材の耐震診断法の作成を打診されたのが始まり。耐震診断でIs値というのは有名であるが、2次部材のインデックスであるIn値があることはあまり知られていない。

2次部材の被害。阪神・淡路大震災の被害と20年前の被害の本質に変化はない。日本では、昭和53年の宮城県沖地震の時に注目され、翌年、建築学会に非構造部材を扱う委員会が設置され、指針が作成された。しかし、非構造部材の耐震設計がなされていなければ、被害は続くことになる。

資料に基づいて、代表的な非構造部材の被害と設計についての解説があった。体育館については、近年多目的な利用がはかられるようになり天井がついている例が多いので、天井が落ちる例が増えるのではないか。

木造住宅に関しての話題。
阪神・淡路大震災の被害から、昭和56年のいわゆる新耐震設計を挟んで被害率に差が見られる。建設省は、新耐震基準によるものは安全性が高いとの見解。木造については、新耐震は確かに機能したと言えるが、明瞭な境界があるとは言えない。基準法の改正で、耐力壁の配置(釣り合いよく配置すること)や接合部に金物を使うことなどが新しく規定された。
品確法は、良いものは良いと表示できるというのが主旨。しかし、欠陥があるものは咎めるという主旨が追加された。木造の耐震等級は、RC造などとは若干異なる。
品確法を既存中古住宅に適用。木造住宅の耐震診断法(防災協会)を利用する。しかし、この診断法は、昭和52年に静岡県のために作成したものが原型であり、昭和60年以降見直されていない。品確法や耐震改修法でも利用されているので、改正できにくい状況であるが、改正するための委員会が動き出す予定。

以上、非構造部材の耐震設計の背景や木造住宅の阪神・淡路大震災以降の状況などについて情報を提供して頂いた。

(文責:高山峯夫)

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