第21回耐震工学研究会
(平成13年11月21日,(株)巴コーポレーション勝どき泉ビル,参加人数:33名)
◆山田哲先生(東京工業大学)「大型振動台を用いた実大構造要素のリアルタイム動的載荷実験」
阪神淡路大震災における鉄骨構造の損傷を解明するために、実大動的載荷試験が計画された。
1996年〜1998年の3年間では、接合部の破断実験を中心として実施され、本年2001年にはダンパー付き骨組の実験を実施した。
柱・梁接合部の破断の原因としては、スカラップ底における応力集中、ひずみ速度の影響、材質の問題などが推定される。ひずみ速度の影響や寸法効果の影響を受けないためには、実大動的実験の実施が不可欠。しかし、振動台上に実大構造物を構築し、加振を行うことは現時点では不可能である。そこで、柱・梁接合部を取り出し、これに動的載荷を行う手法を採用した。(図)
接合部ディテールをパラメータとした実験では、柱には500×500のボックス柱、梁は600×300のH型鋼を基本とした。スカラップ底におけるひずみ集中やウエブの継ぎ手効率について検討した。振動台の入力地震波には神戸海洋気象台波(NS成分)を用いた。破断の開始は、応力集中部から亀裂であった。ひずみ速度は最大約50%/secであったが、破断が発生した時点でのひずみ速度は小さい。ひずみ速度が大きいのは男性挙動の時であった。試験体の材質を変えることは難しいので、試験体の温度を冷却することで破断状況を観察した。+15℃〜−20℃の範囲では、部材角で1/20程度までの変形能力は発揮した。−20℃は遷移温度に対応している。−30℃では1サイクル目で脆性破壊、−50℃では塑性化せずに弾性範囲内で柱部分も含め破壊した。動的載荷中の温度上昇は40℃程度あり、温度の上昇により変形能力が確保されたと考えられる。
最後に、損傷制御構造の動的載荷実験について。ダンパーにはアンボンドブレースを用いた。ダンパーの負担せん断力は全体の25%〜30%程度で設計している。入力地震波には、神戸海洋気象台波(NS)と八戸波(EW)を用いた。レベル2を主架構が降伏しない限界のレベルとし、レベル2の2倍までの加振を行った。ダンパーのエネルギー吸収能力の高さを確認することができた。
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