◆ 免震・制震建物見学会の報告

このたび日建設計の水津秀夫氏のご厚意により、建設工事中の免震建物と竣工した制震建物の見学会を2004年3月17日(水)に実施した。見学会への参加者は36名でした。

まず最初に、現在工事中の免震建物を見学した。
建物の名称は、汐留住友ビルで、地下3階、地上25階、基準階面積4331m2(約110m×40mの平面形)、延べ床面積99400m2の規模である。設計・監理は日建設計。10階までの低層階にホテルが、12階から上層は事務所である。11階は吹き抜けとなっており、免震層は吹き抜けの上、12階の床下に設置されている。いわゆる中間階免震ともいえるし、集中型制震構造ともいえる構造である。さらに特徴的なことは、下層部にある開放的なアトリウムで、約40mの高さの柱で支えられている。従って、低層部の偏心は非常に大きい。

免震部材は、積層ゴムアイソレータ(直径1000mm〜1300mm、41台)、鉛ダンパー(降伏荷重22ton、100体)、鋼棒ダンパー(降伏荷重25ton、14体)。ダンパーの降伏荷重の合計は2,550tonで、免震層上部の重量は約49,100tonなので、ダンパーの降伏せん断力係数は約5.2%となる。これは基礎免震のダンパー量としては多い方であるが、建物全体の重量(約71,600ton)に対する割合でみれば3.6%となり、通常の免震構造のダンパー量となる。これは、建物へ入力された地震エネルギーを免震層で吸収していると考えれば、免震層がどこにあっても建物全重量に対するダンパー量というのはあまり変わらないといえる。

積層ゴムだけの水平剛性で算出される1次周期(建物全体での)は約6秒となっている。免震層上部の重量と積層ゴムの水平剛性だけから算出される周期(1質点と考えたときの)でも4.9秒となる。時刻歴応答解析によるベースシア係数は1階で最大でも0.1くらい、免震層の最大応答変位は30cm以下になっているようである。


次に、この免震建物から歩いて5分のところにある電通本社ビルを見学した。
屋上にあるTMDを見学した。見学当日は風が強くTMD(重さ200ton)が実際に動くのを見ることができました。このTMDの錘の上にはアクティブ・マス・ダンパーが設置されており、この20tonの錘が1mくらいアクチュエータで動くところも観察でき、本当に良かったです。屋上にはTMDが2基設置され、風応答を低減に一役かっているようです。ただ、TMDは動いているのですが、屋上で観察している我々には建物の揺れが全くといって良いほど感じられませんでした。案内をして頂いた電通の方が言うには、強風のせいで事務所の間仕切りからガタガタと音がしているとのこと。TMDを止めることができれば、その差を実感できたかも知れませんが。
次にアトリウム(5層吹き抜け)に設置している曲げダンパー(オイルダンパー)や建物の骨組内に設置してある制震ダンパー(オイルダンパーと鋼材ダンパーの並列)も見学しました。


以上

文責:高山峯夫 2004.3.18

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