日時:平成17年3月1日
講師:武田壽一先生((株)大林組 非常勤顧問)
題目:鉄筋コンクリート構造の耐震設計と将来
今回は、振動解析の時に大変良く利用されるTakedaモデルで有名な武田壽一先生から鉄筋コンクリート構造に関する話を伺った。
講演の内容は非常に多岐にわたり、鉄筋コンクリート構造の
・震害と設計
・動的設計の基礎
・RC建物の耐震設計
・新しい耐震補強
・今後の展開
に関してであった。
震害と設計では、福井地震、新潟地震、十勝沖地震、宮城県沖地震などの震害により建築基準法や学会規準などが改訂されてきた経緯の説明がなされた。
動的設計の基礎では、運動方程式、応答スペクトル、動的解析モデルに至るまでの解説を行った後、RC造特有のひび割れによる剛性低下をどのように反映するかといった点の解説があった。
また、イリノイ大学に留学されてから実験された内容であるとか、大林組で行われた模型実験なども紹介され、梁崩壊型の優位性を説明された。
RC建物の耐震設計では、まず法令の設計フローの紹介のあと、超高層建物の設計例を紹介された。
耐震補強としては、炭素繊維、新しい耐震壁の施工、免震や制振技術による補強の事例の紹介があった。
今後の展開として、性能設計を目指すべきであり、建築主と設計者が性能を選択する。そのためには精度の高い入力地震動の作成が必要である。施工に関しては、建築も産業化・工業化を目指すべきであり、高い品質を確保することが必要。また、環境への配慮も欠かせない。
21世紀に望むこととしては、
(1)柱を丈夫にして、梁にエネルギー吸収を期待する設計を指向する。
(2)コンクリートの魅力を引き出す設計
(3)生産性の向上、プレキャスト化などが有効ではないか。
(4)ひび割れの抑止、長寿命建築
(5)解体コンクリートのガラの再利用
(6)解体・リユースの研究、設計段階で考慮の必要あり
などを示された。コンクリートが喜ばれるような建物をつくっていきたい。そのためにはストックや流通の問題があるが、21世紀におけるRC建築はこのような方向を目指すべきではないか。
○塑性ヒンジの精度、その後の補修をどう考えるか?
免震にすれば解決するのでは(笑)。梁にヒンジは作りやすい。柱は軸力を負担しているので注意がいる。逆に補修は柱の方がやりやすい。
振動台実験で観察すると亀裂がパカパカ開いているが、実験が終わると不思議とひび割れは閉じている。壊れ方の程度が問題である。人命を尊ぶという精神からすれば梁崩壊が望ましい。スムーズな形で全体を設計しておけば、問題は大きくならないのでは。
○減衰機構を組み込むことは有効か?
高層住宅は純ラーメンなのでコアとフレームの間に減衰機構をいれることはできるのではないか。
○Takedaモデルを作る時にやり残しことなどは?
RC建物の特性を考えるには非線形を考えることが必要だと考えた。ひび割れをどう考えるか、せん断破壊はまずい。分からないことがたくさんある。一番分かりやすいのは曲げ破壊であり、それであればモデル化できるのではないかと考えた。
柱-梁の接合部の設計はまだ頼りないのではないか。崩壊形が地震波によって異なる。降伏する位置も変わる。
直交する壁柱の効果をどう考えるか。壁周りの実験が少ないのではないかと感じている。ロッキング振動による効果もどうなっているのか、まだよく分からないところではないか。
設計をする前の資料(RC建物の非線形特性に関するもの)を更に充実させていく必要がある。単純な解析でもいいので。
○今後の課題として
鋼管やカーボンファイバーなどを巻いて補強しているが、それに代わるもっと良いものがないか。
限界耐力計算で地盤と構造物が離れているのでは。地盤と建物のインタラクションをもっと反映すべきではないか。地盤の非線形をもっと簡単に使えるツール(プログラム)が必要ではないか。
地表面で観測される加速度は大きなものが記録されてきているが、解析で使う入力加速度は小さい。入力損失の定量化も必要ではないか。そのためには実際の建物に地震計を設置してもっと観測を行うべきではないか。そうしないと実態がつかめない。
(文責:高山峯夫)
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