◆ 第46回研究会 概要

日時:平成17年12月14日,中央大学 駿河台記念館
講師:斎藤公男先生(日本大学教授)・小田憲史(太陽工業(株)空間技術研究所所長)
題目:膜構造建築物の設計について

概 要:
まず斎藤先生から膜構造の設計全般に関しての解説をして頂いた。
「膜構造の技術基準及び同解説」が刊行されて、膜構造は使いやすくなったのか?
膜構造は特殊構造として扱われ、時刻歴解析が求められる。しかし、膜構造のようなものをどうやって振動解析するのか、モデル化はどうするのか、非常に難しい。手続きが先行している。解析結果ではなく、設計のプロセスや施工方法を確認(ピアチェック)する必要がある。膜協や建築センターなどの審査できちんとやることが重要である。
膜面の構造・定着が問題ではないかと感じている。膜の固定方法をどう考えるのか? 膜の豊かな表現をどうすれば実現できるのか?
膜の本質的な特性を踏まえた議論が不可欠である。膜材料の特性において、クリープや剛性は定めにくい。ファジーなものとして扱えば良いと思うが、解析はリジッドなものとなりがちで、解析と現実が乖離している。その他、膜とケーブルの接触、しわの発生の問題などが示された。
その後、幾つかの設計例が紹介された。
群馬馬事公苑では雪荷重による被害が発生。ディテール(力の伝達メカニズム)に基づいた解析が重要。山口きららドームや日大テクノプレースの紹介があった。
最後にドイツ・ワールドカップの膜スタジアムでの研修会の話題。ドイツなどで使われているETFEという新しい材料は認定材料になっていない。ここにも技術基準を法令で規定することの弊害が現れている。

次に、小田氏に膜材料の特性、設計、告示のことなどを解説して頂いた。
東京ドームの膜材料も重量は、1平方メートルで800g。膜材は基布とコーティング材から構成される。基布にはポリエステル繊維か、ガラス繊維が用いられる。基布は縦糸と横糸で編まれていて、繊維の方向によって特性が異なる。コーティング材には、塩化ビニル樹脂か、4フッ化エチレン樹脂が用いられる。ポリエステル繊維と塩化ビニル樹脂の耐久性は15年位以下、ガラス繊維と4フッ化エチレン樹脂の耐久性は20年以上である。
一般的な膜材料の種類は下表のとおり。

コーティング材
4フッ化エチレン樹脂(PTFE) 塩化ビニル樹脂(PVC)
基布 ガラス繊維
ポリエステル繊維

膜材料の試験には、JIS L1096という紙の試験に準じており、通常の構造材料との試験とは随分異なる。
法律上の扱いとしては、H14年666号告示で構造方法に関する技術的基準が示された。分類は、

・骨組膜構造
・サスペンション構造
・空気膜構造

となっているが、ほとんどが骨組膜構造である。
告示の改正については以下のような点を検討している。

・認定材料になっていないが、これまでに実績のあるものは使えるようにする。
・規模の規定で、1000平方メートル以下というものはほとんどないので、規模の制限をはずす。
・1000平方メートルを超えると時刻歴解析が必要となるが、これを簡便に行う方法の検討。例えば、地震荷重が支配的でなければ検討しなくても良いとか。

研究会終了後の懇親会では、姉歯元建築士による構造計算書偽造のことなどが話題となった。偶然であるが、斎藤研究室が今回の研究会の会場の直ぐ近くであったことから、懇親会終了後、研究室を訪問させて頂いた。どういった空間で研究や設計が行われているのかを目にすることは楽しく、また刺激的であった。

(文責:高山峯夫)

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