◆ 第53回研究会 概要

講 師:飯場正紀氏(建築研究所)
テーマ:「限界耐力計算における表層地盤増幅の考え方」
  
概 要:

 2000年に建築基準法が改正施行されて、地震動は工学的基盤で加速度応答スペクトルによって規定された。工学的基盤から建物基礎に至るまで地震動は一般的には増幅する。この表層地盤の増幅率も法律(告示)で規定されている。この表層地盤の増幅をどのように求めるのか、それがどのように規定されたのかについて、規定の原案を作成された飯場氏から解説してもらった。

 工学的基盤はせん断波速度Vsで400m/s以上相当の地盤とされている。地震学の分野では工学基盤はVsで700m/sを言うし、地震基盤とはVsで数kmの地盤を指す。長周期成分の増幅を正しく捉えるには深い地盤構造が不可欠と言われているが、この400m/sはボーリング調査できる現実的な判断から決められている。

 限界耐力計算における地盤増幅は、地盤の非線形特性を考慮し、かつ複層地盤を1層の地盤に置換して求めている。モデル化にあたっては地盤の1次元重複反射理論の結果と整合するように配慮されているものの、モデル化の適用範囲などを示す必要があったのかも知れない。そもそも高度は技術的な問題を法律にすること自体に無理があったのかも知れない。

 建物と地盤の相互作用に関するテーマは古くて新しい問題である。埋め込み基礎、杭基礎、地盤の非線形の影響などをどう考慮するのか。地盤増幅や相互作用に着目した観測例はそれほど多くない。建物−地盤を含めた地震観測体制を強化することが非常に重要ではないか。法改正により工学的地盤の傾斜が5度以下であることを確認するような規定が追加され、ボーリング調査データがより求められるようになった(現実的にはボーリングできないこともある)。限界耐力計算の適用条件を厳しくするための処置のように感じるが、これにより免震建物の告示計算も影響を受けている。戸建て免震でも敷地の外でのボーリングデータが必要な事態になり、戸建て免震への告示計算が困難な状況になっていると聞く。法体系の見直しが急務である。



文責:高山峯夫

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