◆ 第56回研究会 概要

講 師:秋山宏先生(東京大学名誉教授)

テーマ:「地震動の多様性に対応した耐震設計」 

今年、日本大学を定年退職された秋山宏先生にご講演をお願いした。近年の地震動の多様性に対応した耐震設計をいかに構築すれば良いのかということに対して、エネルギーの釣合に基づいた手法を活用した手法をご紹介して頂いた。

地震動はますます複雑なものとなった。耐震設計が始まって1世紀くらいになるが、地震動はなかなかよく分からない。倍半分の世界と言われるが、だからといって適当にやって良いわけではない。エネルギースペクトルが大事だと思うが、地震動の研究分野では認知されていない。エネルギースペクトルは弾塑性系に入ってくるエネルギーを示したもの。しかし、弾性論に基づいた速度応答スペクトルが広く行き渡っている。

近年では長周期地震動や内陸地震で大きな地震動、これまで知られていなかった性質をもった波動が観測されている。驚いているばかりではなく、どう対応するのかを考える必要がある、

そこで、まずはエネルギースペクトルと速度応答スペクトルの関係を明らかにする。エネルギースペクトルは累積値であり、速度応答スペクトルは最大値に対応しているとも言える。これらの点を参考資料[日本建築学会構造系論文集、第608号、200610月]を使って解説。

その後、地震動の多様性に対応する耐震設計について解説された。多層ラーメン構造の耐震設計評価式を、エネルギーの釣合式を用いて導出。さらにPδ効果を考慮した場合についても同様な評価式を提唱。これらにより入力地震動のレベルが変わっても応答を許容値以内にするために必要な設計用せん断力係数が求められた。

地震動にレベルに相場ができあがってきているのではないか。設計レベルを超える入力に対する設計(応答)を考えることが、これからの本来の設計になるべきである。柏崎刈羽原発では予測された地震動レベルよりも大きな入力だったにも拘わらず、被害は少なかった。これは静的設計で通常の建物の3倍の地震力を用いていたためである。いずれにしろ、コンピュータ解析で、好きな応答値を得るようなことは止めるべきである。

以上(文責:高山峯夫)


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