◆ 第57回研究会 概要

講 師:石山祐二先生(北海道大学名誉教授, 株式会社NewsT研究所代表)

テーマ:「耐震規定と私の研究を振り返って」 

関東に25年、北大で13年の研究生活をご紹介いただいた。
最初の研究は、地震動による物体の転倒の研究で、古くは墓石の転倒から震度の推定などが行われていたが、家具がロッキングし、すべり、跳躍して床に衝突する問題に取り組んだ。その結果、物体(家具)の幅・高さ比と加速度や速度の関係から転倒条件を明らかにした。
1981年にはインドネシアで技術協力に行って、実験施設のないところで建物の加力試験を行うために、試験体(建物)を傾斜させて、重力を使った実験を行った。
1981年からは新耐震設計に取り組んだ。震度から層せん断力係数へ、Ai分布、保有耐力と許容応力度などの問題。
1989年から1991年は、ペルーの地震防災センターで研究指導に従事。ペルーは雨が降らないので、現場打ちの泥構造でできていたり、日本との環境の違いに最初は戸惑った。
1991年からは北海道大学に移った。
その後、新耐震への取り組みなどを紹介していただいた。
地域係数Zは、工学的な判断で決めている。
振動特性係数Rtは、地盤種別3種に対して、長周期側で速度レベルが一定になるようにして決めた。
Ai分布の提案では、基準化質量を用いることがミソで、震度一様分布、震度逆三角形分布、超高層のムチ振り現象を組み合わせたものになっている。
用途係数については、建築基準法は最低基準ということで、取り入れられなかった。しかし、今後は法に取り入れる必要があるのではないか。
現在は、ローラー支承を使った小型の免震装置などの研究開発に取り組んでいる。現役を引退して少しは時間ができるかと思っていたが、いろんな会合にでる機会が増えている。
最後に石山先生が執筆された書籍を紹介しておく。
石山祐二著「建築構造を知るための基礎知識 耐震規定と構造動力学」三和書籍,2008
本書では,地震被害、日本の耐震規定、振動論などがわかりやすく説明されている。
(文責:高山峯夫)