講師:藤田隆史先生(東京大学名誉教授)
テーマ:知粋館までのあゆみ
(平成24年6月29日, 知粋館(東京都杉並区阿佐谷南1丁目))
概 要:
今回の研究会は、構造計画研究所のご協力のもと、知粋館(写真2)を会場として実施した。講師には3次元免震の研究にも長年携わってこられた藤田隆史先生をお招きした。ご講演では、免震床の発展や高速増殖炉(FBR)プラントの研究なども含め知粋館実現までをご紹介いただいた。
上下免震に関しては、目標周期は2秒と設定した。しかし、この周期をコイルばねのようなもので実現しようとすると初期変形が60cmにも達する。これでは実用化できない。そこで、高さ調整もできる空気ばねに注目。空気ばねには、ローリングシール型とベローズ型がある。知粋館で用いられたのは既存のベローズ型で空気圧も高くできなかった(写真3)。知粋館の免震層内にはコンプレッサーがあり、常に空気ばねの高さを維持している。日本では高圧ガスの規制で10気圧までしか使用できない。ロシアには50気圧(5MPa)で使っているものもあり、視察にも行った。高圧空気ばねが破裂するのは200気圧(20MPa)。ローリングシール型であればより高い空気圧で使用可能となる。
今後、3次元免震を広く適用するには、大型で高圧のローリングシール型の空気ばねを実用化する必要がある。加えて、3次元免震の潜在的なニーズの掘り起こしも必要となる。3次元免震の実用化の事実を世界に発信していくためにも知粋館の存在は有意義である。
(文責:高山峯夫)