講師:五十田博先生(信州大学教授)
テーマ:木造建築の耐震設計とその課題 ―住宅の設計から大規模木造まで―
(平成24年9月4日, 日本大学理工学部)
概 要:
五十田先生からは、住宅レベルから8階建て程度の木造建築の設計実務に関わる話題をご紹介いただいた。木造建築に携わっている方々をピラミッドに例えると、一番下に大工・工務店・地域ビルダーがいて、その上に大手ハウスメーカー、そして一番上に構造技術者がいる。構造技術者からは決め過ぎると怒られ、小規模ビルダーからは難しすぎると言われる。木造建築の設計法をつくりこみすぎているのか?
木造住宅を対象とした設計法には、建築基準法・施行令、品確法、許容応力度計算、限界耐力計算などがある。これらの計算法が求めている耐震性にはばらつきがあり、壁量計算による耐震性のばらつきがもっとも大きい。壁量計算で求めた結果を許容応力度計算で計算しなおすと耐力が足りない。建築基準法がツギハギでできていることも要因で、そもそも地震力算定用重量の計算からして異なる。
壁量計算がもっとも耐震性が低くなる可能性がある。しかし、設計や手続きが簡単なため、上位の設計法(許容応力度計算など)を選択する理由がない。さらに実験も容易にでき、実験結果から許容耐力を求めると、強度も一般的に高くとれる。結果として、仕様規定以外で設計する住宅はない、ということに。木造住宅の震動台実験によれば、耐震性には非構造部材の寄与も大きいことがわかっている。
そのほか、告示593号の改正で、1・2階がRC造で3階が木造の混構造建物が可能になったり、1階RC造で2階が木造の大規模平面(延床面積3000m2以下)が可能になった。まだ研究段階であるものの、平面的併用構造の耐震性や設計法のルールなどについてもご紹介いただいた。
(文責:高山峯夫)