◆ 第77回研究会 概要

講師:坂田弘安先生(東京工業大学教授)
テーマ:木質制振壁の開発とその健全な普及に向けた取り組み
(平成25年4月22日(月),中央大学駿河台記念館)

軸組木造住宅が日本の住宅の約9割を占めている。既存、新築を問わず安価で高性能な制振技術を開発し、その適用を目指している。ところで、制振構造の定義は何か? ダンパーが付いていれば制振構造なのか、ダンパーは30種類ほどあるものの、中には効かないものもある、性能はどう評価するのか。接合部変形に留意して、ダンパーへ変形を集中させる荷構の開発と制振性能の評価手法を開発する。

速度依存型ダンパーを組み込んだ壁の加力実験から、ダンパーの取り付け方法などを提案した。また、性能評価法として、ダンパーがない場合(状態N)とダンパーを剛とした場合(状態R)の静的加力実験から、ダンパー付き制振壁の性能を評価する方法を提案した。

筋交い壁と制振壁の振動台実験を実施した。在来型フレームは大きな地震を受けた後は、その性能が低下しているが、制振フレームの性能は維持されていた。粘弾性ダンパーを使った制振壁は微少変形においても優れたエネルギー吸収性能を発揮した。摩擦ダンパーは耐力が頭打ちになることで、加速度を制御することも可能である。

2層モデルの振動台実験を実施した。内外装材がない場合、試験体の変形モードは1層と2層の剛性比に対して敏感であったものの、内外装材が取り付くことにより1層に損傷が集中した。内外装材によって変形を抑える効果がみられ、外装材よりも内装材による影響が強いというのは興味深い。また、ダンパーの取り付け方法にも注意が必要。ダンパーに変形を伝えるだけの剛性や強度がフレームには必要である。

制振構造の健全な普及のためには、効かない制振ができないようにすることが大事。現行の耐震設計法の枠組みのなかで制振構造を設計しようとするとさまざまな問題が生じる。制振壁の性能を適切に組み込むことが求められる。また、内外装材の効果(剛性の影響)を評価することも、木造戸建て住宅の制振性能を評価する上では重要であると思われる。

(文責:高山峯夫)