テーマ:
長周期地震動と免震構造の対応
-東京理科大学での17年間の研究を振返って-
講師:北村春幸 先生( 東京理科大学 )
日時:平成30年1月15日
概要:

東京理科大学を3月で退職される北村先生に、大学時代に取り組まれてきた研究内容をご紹介いただいた。北村先生は日建設計で25年間にわたり構造設計に従事され、2001年から東京理科大学の教授として研究・教育に取り組まれた。2003年の十勝沖地震を契機に、長周期地震動が注目され、超高層建物や免震・制振構造の性能評価と対策を中心に研究活動を進めてきた。

講演では、免震構造と対象にした長周期地震動対応策に関して下記の点について紹介された。

・長周期地震動をエネルギースペクトルと応答スペクトルとの対応から評価した単位地震動の反復数f値について
・免震構造を対象に、エネルギーの釣り合いに基づく応答評価法の長周期地震動への適用方法について
・長周期地震動による減衰性能を持つ積層ゴムやダンパーの特性変化(繰り返し依存性)について

最初に秋山宏先生が提案されたエネルギー法を免震構造に適用する方法が紹介された。エネルギー法は包括的に応答を評価できる方法であり、免震建物の応答を把握するにはいい方法といえる。長周期地震動は通常の地震動に比べて継続時間が長くなる。そこで免震部材に多数回の繰り返し変形が発生することになり、そうした場合の性能評価が重要となる。長周期地震動の影響を評価するために「単位地震動」が何度続いて発生したのかで評価する方法が提案された。単位地震動の何回分かを示すものとしてf値が提案された。

繰り返し変形を受けると鉛プラグ入り積層ゴムでは鉛プラグが発熱し、耐力(降伏荷重)が低下し、地震エネルギーの吸収性能が落ちてくる。こうした特性を反映した地震時応答の評価手法なども提案された。また、高減衰積層ゴムが水平2方向(楕円加振など)の繰り返し変形を受けるとねじれ歪が蓄積し、限界変形が低下する現象が起きる。こうした現象のメカニズムを明らかにされた。

南海トラフの巨大地震では長周期地震動の発生が危惧されており、免震構造の地震応答評価では長周期地震動による評価が必要となっている。どういう入力地震動を設定するのか、適切な応答評価のやり方は、そして性能の判定(クライテリア)をどうするのか。こうしたことを全部できるのが、構造設計者である、と。

(文責:高山峯夫)